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ボージー

1975年 秋。
僕は新宿西口のV-Oneをあとにして、歌舞伎町のQ&Bに移った。

V-Oneに比べると随分と小箱。場所は、西武新宿駅のそば。
初出勤の日は、なんとなく、気が重かった。
慣れない場所で働くから・・それだけではなかった。

V-Oneの仲間達と別れてきたことが、ひどく寂しかった。
彼らは、皆ファンクが好きだったし、横田からのブラザー達も本当に仲良くしてくれた。
そこから抜けて、キャバレー色(V-One、Q&B、母体はキャバレーチェーンだった)の強いQ&Bに移るのは、いざとなると、やっぱり・・
辛いものがあった。
情けないことに、その時の僕は早くもホームシックになっていたわけだ。

Q&Bの店内に入り店長に挨拶してから、奥まったところにあるDJブースに行くと、DJの人数が足りなかったせいか、ホールの主任が回していた。
これも、80年代には想像も出来ないと思うけど、70年代のディスコではよくあることだった。
ディスコDJが専門職として確立されていなくて、ホールからの延長線上だったから、こんな感じでDJに移行していくのが多かったんだね。

その時、彼がかけていたのは、OHIO PLAYERSの"LOVE ROLLER COASTER"だった。
どうしてだろう?
その時の光景は、30年も経つ今でも、ハッキリと覚えている。

ども。
テリーです。
今日からなんです。よろしくお願いします。
はい。交代します。

V-Oneに比べて、DJブースも狭かった。
これも、閉所恐怖症の傾向がある僕には気を重くさせた。

相棒の黒人DJは8時から交代に来るということだった。
それまで、俺一人か・・

DJブースの横には階段があって、上だか下だかにあったキャバレーに出演している楽団の人達が、時々ドヤドヤと通った。
平日だったせいか、時間が早かったせいか、お客さんは少なかった。
V-Oneなら、これでフロアがノルのにってな曲も、シラケるばかり・・。
ますます、気が重くなっていく。

時間が来て、相棒になる黒人DJがやって来た。

BoG・・
ボージーという男だった。

その頃のイケテル黒人達は、多少なりとも、スーパーフライの影響を受けていたものだ。
ハイヒールに裾幅の広いズボン、ツバ広の帽子・・
それが普通というものだった。
アイズリーBros.の3+3のジャケットそのまんまみたいな連中さえ多かったのだから。

しかし・・
その時のボージーは、ニットのスキー帽みたいのをカブって、だぶだぶのリーバイスにコンバースをはいていた。

そう、今でこそ、当たり前の黒人のかっこうだったわけ。
彼は、ブルックリンの人間だった。

でも、でも・・
その時の僕には・・理解できないほど、ダサかった・・。
・・で、僕はといえば、アフロをやめて、また、ロンゲに戻りつつあった。

ゲンコツをぶつけ合って挨拶をしてから、お互いを観察しあった。
ボージーはボージーで、感ずることもあったのだろう。

彼が聞いた。
なぜ、星条旗の指輪をしているんだ?

なぜって?
自分がしているプラスティックの指輪を見やりながら、自問する。
特に意味なんか・・なかった。

当時は、今と違って、アメリカからの情報がすごく遅かったし、USの衣料品を買うのも大変だった。
アメ横とか、下北沢の市場、渋谷・道玄坂の衣料雑貨店・・そんなところで、アメリカの香りを追い求め、買ったのを覚えている。

アメリカ・・

良くも悪くも、僕ら青春の憧れだったし、簡単に手が届く場所ではなかったんだ。
だから、きっと、僕は星条旗の指輪をしていたんだろう。
ミーハーといわれれば、それだけのものだった。

なぜ、星条旗の指輪をしているんだ?

なぜ?
好きだからさ・・。

そう答えると、ボージーは言った。

おまえはソウルミュージックのDJとして、ここにいるわけだろう?
星条旗は、白人の旗だ。
俺達の旗じゃない。

俺達の旗は
これだ。

ボージーは、袖に縫いつけた三色のラインを指さした。



血と肌の色と緑の大地だよ。
俺達が誇りにしているものだ。

いや・・ちょっと待ってよ・・
僕に、そういうことを言われてもさぁ・・

むっとしながら言い返そうとして、ボージーの黒い瞳を見た時、僕は言葉を飲んだ。
ファッションで捉えている人間と、現実を背負って生きてきた人間との違いが、僕を沈黙させたのかもしれない。

あらためて見る彼の肌は、アメリカの黒人としては、かなり黒いほうだった。

ブラザー ギャレット

ボージーとの出会いは、こんな感じだった。

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